第一部3巻
Part11「個人教授」
麦は生徒会長伊藤から、中学生の女の子雪の家庭教師のアルバイトを紹介される。雪の誘惑するような言動に幾分翻弄される麦。ノートに「好き 恋人にして」と書く雪に麦は「恋人」を「兄貴」と書き換える。気の多い岩崎は麦に生徒副会長の石田節子が本命だと告げる。ある日岩崎は麦にセックスフレンドを紹介する。たまたま雪の家庭教師の日だった為に、その日は彼女と喫茶店で少し話しをしただけで終わった。岩崎と語らう中で、麦は女性にも性欲はあるのだろうか、愛と結び付いた時にだけ性欲はあるのではないか、と尋ねる。岩崎は、愛と性欲を絡めると難解になる、と答える。飼い猫「涙」が前とは違うメス猫と仲良くしているのを見て、麦は岩崎が紹介してくれた女性に電話しようかと思う。麦の中で、欲望という怪獣が目を覚まそうとしていた。
Part12「春のフーガ」
麦の靴箱の中に5通のラブレターが入っている。そのことを岩崎と話している時に岩崎の本命だという節子が現れ、岩崎は、麦は5人ともデートするつもりだ、とからかうと、節子はデートしてくれるのなら自分も出そうかと意味ありげなことを言う。5通の中で1通だけ気になるラブレターがあった。数首の短歌の羅列が書かれてある吉野桜からのものだった。麦のラグビー部は地区大会で前年の優勝チームと当たり、苦戦するが、麦がトライを決め、連続ゼロ敗記録の更新を免れる。喜んだラグビー部員は麦の家で祝賀会を開く。その歓喜の中で麦は吉野桜と上手くいくかも知れないと思い、後日彼女と会う約束をする。しかし、彼女の目当ては麦の父、秋田記(しるす)のサインを貰いたい、というものだった。(ラブレターの中の短歌は記の歌だった)吉野桜を父にとられてしまった麦だが、彼女に何の感情ももっていなくて軽率な行動をとったと思う。
Part13「矢ぐるまの花」
麦が学校から帰ろうとすると、待ち伏せしている雪に出会う。二人で歩いていると節子に出会い、三人で喫茶店に入る。麦は雪に節子は親友の恋人だと紹介するが、節子は自分は恋人はいないと言う。帰りに花屋に立ち寄った麦は雪に薔薇を、節子は矢ぐるま草が好きだと言うので矢ぐるま草を買ってあげる。節子が言うには、矢ぐるま草はイギリスではムギの間にはえるのでコーン・フラワーだと言うらしい。後日麦は岩崎に、節子は恋人はいない、と言っていたことを話し、岩崎は仲を取り持ってくれと麦に頼む。節子に岩崎の気持ちを伝える麦。しかし、節子の岩崎に対する気持ちはつれない。節子は麦が岩崎を好きになれと言うなら、そうすると言う。その代わり一度だけ抱きしめて、とも。倒錯感に満ちた二人だが、冗談は止めよう、という麦の言葉に彼女も我を取り戻す。その後になってやっと以前節子が言った、矢ぐるま草はイギリスではムギの間にはえる・・・という言葉の意味を知る。事の始終を岩崎に伝える麦。麦は、節子は心が揺れ動いているだけで、岩崎が真面目にしていればまた彼女は戻ってくる、と言う。岩崎は麦の胸を借りて涙する。函館の青柳町こそかなしけれ友の恋歌矢ぐるまの花(石川啄木)
Part14「不良少女」
ある日歩いている麦に身を寄せる少女がいた。彼女は万引きをしたと疑われていたのだった。その場では、駆けつけていた刑事の身体検査では何も見つからず、彼女は疑いを逃れる。彼女は阿部美貴と名乗り、後になって麦のポケットから彼女が万引きしたつけまつげが出てくる。彼女は麦に身を寄せた時に、麦のポケットに万引きした商品を忍ばせたのだった。美樹を探し当てた麦は彼女が不良グループにいることを知り、グループを抜けるように言う。後に麦の家を訪問した彼女はグループを抜けたら付き合ってくれるかと尋ねる。やがてグループを抜けて、それでリンチに遭ったと彼女から電話がかかる。彼女の元へと駆けつけた麦はこっそりと強い酒を飲まされ、一晩過ごすことになる。目覚めると、ヌードの彼女がいた。
Part15「心中ゲーム」
酒に酔った麦は、美貴には結局何もしていなかったようだった。その後一度美貴とデートした麦だったが、やがて美貴から別れの手紙が届く。そして馴染みの刑事から、美貴がグループの一人を刺して逃走中だと知らされる。麦は美貴の行き先に心当たりがあった。美貴は父親が何度か変わっていたが、その中で一番好きだった父との思い出の場所、九十九里の切れる所にテトラポッドがたくさんある海岸だった。美貴の思い出の場所に向かい、美貴に出会う麦。美貴は一緒に死んでくれる?と尋ねる。それはゲームだった。一緒に靴を脱ぎ、海に入り、お互い別々の方向に向かう心中ゲーム。そうやって麦は美貴と別れた。
Part16「仲間たち」
麦達は高校最後のラグビー部の夏合宿に海へと向かう。そこに現れた女の子達。岩崎たちは女の子と一緒に過ごすが、麦と大前邦雄は食材探しに買い物に出かける。そこで邦雄は、地元の小麦色の肌の少女を見初める。その夜、麦と邦雄は地元の混浴露天風呂に向かう。おばさんしかやって来ないと聞いていたが、邦雄が見初めた少女と連れの中居さんがやって来た。とんでもない所で会ってしまったと悔やむ邦雄。麦は二人の仲を取り持ち、逢い引きをさせる。夏合宿はそれらしいカップルも出来、和やかに進んでいく。麦は女の子達の中の瑞江と親しくなる。瑞江は自分から口づけしてくるが、麦が抱きしめ返そうとすると、麦の手からすり抜けて逃げた。奔放な少女だった。ある日、邦雄が帰って来ない。例の少女から許嫁がいると聞いた邦雄は一人で海辺にいた。麦は邦雄を励ます。合宿最後の夜はラグビー部員と女の子達に加えて、邦雄の見初めた少女も加わり、華やかなキャンプファイヤーで幕を閉じた。
←第一部2巻に戻る ↑目次に戻る →第一部4巻に進む