第一部4巻
Part17「前略母上さま」
夏合宿に彼女が出来たラグビー部の何人かの部員には、相手から手紙が届いていた。その中の一人梅室には、親しくなったスミ子から結婚を迫る手紙が届いた。麦はスミ子の気持ちを確かめるべく、スミ子と親しい瑞江と会って話を聞く。スミ子は妊娠しているとのことだった。やよいからは麦にバースデーカードが届いていた。折しも麦の父記(しるす)には縁談が持ち上がっていた。相手は記担当の編集者だった。麦は父に結婚を勧める。しかし父は、麦の母以外の女性に恋をするなど邪悪な欲望だと言う。梅室の相手の妊娠、赤ん坊・・・麦はその先に、幼い自分を抱いた父親を連想する。季節は三月・・・風の強い日・・・麦が波のようにうねっていた・・・妻逝きていつめぐりくる麦の秋わが手の中の乳くさき春(秋田記)
Part18「人妻」
梅室の相手スミ子は想像妊娠だった。麦は岩崎に連れられて、女子校の文化祭に出かける。そこで麦は天真爛漫な少女睦月に出会う。麦は彼女こそ自分の求めている女性だと直感し、後日岩崎に彼女のことについて詳しく知りたいと頼む。夏合宿で彼女を見つけた邦雄は、東洋興産の就職試験に受かっていた。麦の家を訪ねた岩浮ヘ、睦月は結婚して子供がいるから諦めろ、と語った。始めは学校で大騒動だったが、二人の愛の深さに学校をあげて応援したとも。後日、麦は睦月の家の近くに行き、子供を連れた彼女に再会だけ果たした。
Part19「イエスタディ」
麦は以前破傷風の怪我の後で、星子への思いを「春の熱病」という小説にし「少女文芸」の新人賞に応募していた。作品は佳作を受賞していた。北大の獣医学科を目指す麦は、共通一次試験を目前に控えていた。岩崎は学習院大学を受験するらしい。麦は共通一次試験を控えていたが、授賞式が星子の命日でもあった為出席を決意する。作品の受賞は北海道の民宿でお世話になった老人にも電話で伝えた。突然授賞式に現れた、その老人。彼を麦の父達は、先生と呼んだ。老人は大河小説の巨匠桂英太郎だったのだ。星子との思い出の場所を訪れた麦は、改めて彼女に別れを告げた。やがて共通一次の日となり、麦は試験会場へ向かう。
Part20「すみれ色の」
共通一次の試験会場で、麦は民夫に出会う。民夫は夢なし得ず夭折した友人の志を受け継ぎ、東大を受験するのだった。試験が終わったある日、麦は女生徒の自分への視線に不穏なものを感じた。その訳は、どうやら麦と岩崎がホモだという噂があるせいだった。その帰り、麦は涙をためた知らない女生徒からいきなり「不潔」だと言われる。麦は岩崎がかつて本命の人だと言った節子に、原因を突き止めるよう頼む。節子が調べた結果、麦が恋人がいないせいだということだった。麦に想いを寄せる女の子がいて、麦に恋人がいないのは岩崎とホモだからだ、だという噂にエスカレートしたらしい。岩崎には女の子はいっぱいいるだろうと思った麦だが、節子にふられてから誰とも親しく付き合っていないことに気付く。電話越しにそのことを言った麦に、嬉しそうにうなづく節子を感じた。彼女は岩崎を想い続けている。麦への心の揺らめきも、自分の中に岩崎を見つけたせいだと感じた。いつものように岩崎とダベっていた麦達に、麦に「不潔」と言った里見幸子が現れる。岩崎は二人の中をとりもち、その場から消えた。二次試験が終ったら会ってくれるか、と言う彼女の問いかけに、麦は「僕こそ」と答える。二次試験の前日、幸子はすみれを持って麦の家を訪ねる。
Part21「北帰行」
麦は北大の獣医学科の二次試験を受ける為に、再び北海道を訪れる。麦が旅立った後、幸子はもし麦が北大に受かったら、もう会えなくなることに不安を感じる。麦は試験の前に桂英太郎の民宿を訪ねる。麦は前年子馬を取り上げた牧場で、大きく育ったその馬に再会する。その馬は桂英太郎により、「麦星(バクスター)」と名付けられていた。桂は、星の日に生まれ麦が取り上げた馬だからだと言い、麦は”星”子との想いに気持ちを巡らせる。麦は二次試験の受験の為に北大へ向かうが、日にちを間違えていて受験日は前日だった。麦の浪人が決まった。
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