生の砦

  無人の救急車が目的地を見失う
  僕の変死体がなおも恋文を書き続ける

  生きているうちに死のうと思った
  生の終焉の先に死があるとしたら
  死は生を圧倒するのだろうか
  僕の中で生と死が葛藤し続け
  僕の命は目眩の中で埋没を続ける

  死の淵で君に出会った
  繰り返し見てしまう夢のように
  君は僕の生を誘惑する
  僕は生の淵で窒息しそうになる
  君の命が欲しい
  そんな想いが生と死の間で揺れ動いた

  僕たちは揃いの服を着て
  お互いの荷物を持って
  憧れの湖を目指す
  二人が乗った高速バスは
  僕たちを刺殺する為に走っているというのに
  狂気に満ちた目を光らせているのに

  夏の中での完全犯罪
  僕たちの握りしめた鋭利なナイフ
  僕たちは生を祈りながら
  恒久の命を信じながら
  埋葬される
  さよならは言わない
  ちょっと死んでみるだけだ
  その後に
  永遠の朝がくる

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